また骨体では「外耳孔の下縁と鼻棘を結んだ線がカンペル平面に平行である」といわれている2)
臨床の場における咬合平面の測定法は、現在では生体上での計測が一般的である。ことに総義歯製作時においては上下咬合床間に咬合平面板を装着、咬み合わすことにより顔面上の左右鼻聴道線と平面板との平行関係を測定し咬合平面を決定しているが、この術式は簡易ではあるが測定値にバラツキがあり正確さに欠けるおそれがある(A)。
さて筆者は局部床義歯、総義歯の製作にあたり昭和55年より側面(側貌)頭都X線規格写真−セファローを活用して咬合平面の測定を行っている。この技術的方法についてはカンペル平面を利用した『セファロによる咬合平面を基準にした有床義歯の製作法』として、すでに1985年西村4)が詳細に報告している。
A一般の測定法として、顔面上の鼻聴道線と上顎咬合床との平行性を観察して、咬合平面を決定しているが、顔面形態の差異により視覚的誤差を生む。
 この「セファロによる咬合平面の測定方法」の特長は、補綴学分野における重要な咬合平面の測定値の精度を飛躍的に向上させ、さらに図面上に咬合面が線として記入されることにより多くの情報が数値で表現できるようになったことである。
 この発想によって設計製作された局部床義歯、総義歯は臨床の場で多くの患者に満足させる結果を得ることができた。しかし、その後ある総義歯の症例に遭遇し、装着数カ月後のメンテナンス時に下顎総義歯前歯部が上顎総義歯床を突き上げている現象を観察した。
 この現象に筆者は咬合平面の設定に間題があるのではと疑い試行錯誤の末、セファロ図面上のカンペル平面の後方点を外耳孔下縁点(イアーロッドの円マークの下縁接縁)より8mm上の上縁点に修正し、それに基づき上下義歯人工臼歯部の再配列を行い矢状的咬合平面の修正を試みたところ、突き上げ現象がまったく消失した(B)。
 この後多くの症例を検討した結果、一入ひとりに特有な咬合平面があり、いままでのように一律な咬合様式を定めて補綴設計を行うことに疑間と危険性を憶えるに至り、つぎのような仮説を試みた次第である。
Bセファロ図面上のカンペル平面の後方点を外耳孔下縁点より8mm上の上縁点に修正する。