さて上記のごとく計測点の新たな発見により無歯顎の場合でも容易に咬合圧平面をセファロ上に再現することが可能になり、正確な咬合平面によって設計された総義歯の製作が一層可能になった。
 最後に先述の分類された上下顎咬合圧平面の平行関係による分類が、臨床的にどのような意義があるのかを簡単に述べてみたい。
 1級)上下の咬合圧平面が平行であることにより力学的にも咬合のバランスがよく、口腔内の歯牙の喪失は少なく、歯冠修復、インプラント、義歯などにおいても長期的に安定した補綴が望める。
 2級)上顎咬合圧平面に対し下顎咬合圧平面が前方に向かい間が狭くなる咬合関係で主に臼歯部の咬耗、または補綴的低位咬合などの咬合関係に見られる。このような症例では、セファ口上でマイナスの顎問距離(〜mm)を計算することにより、顎位を回復することが可能である。
 3級)上顎咬合圧平面に対し下顎咬合圧平面が前方に向かい広くなる症例で、骨構造体が多分に遺伝的であるのか、あるいは後天的な発育不全によるものかと思われる。このような咬合関係にあるときは歯周病あるいは顎関節症等になりやすく、補綴的にも歯冠修復物の耐久性に問題が生じやすい。インプラント等は絶対禁忌である。

おわりに

 咬合圧平面はカンベル平面のように仮想的な平面ではなく、固有の骨体の計測のために正確な数値であらわすことができる。
 また加齢にしたがい、咬合平面、顎骨の形態変化、顎の移動量などの多くの情報が得ることができる。
 上下顎咬合圧平面は、三次元的咬合平面の診査測定、さらに正常な咬合平面の設計から得られる歯冠修復、インプラント、局部床義歯、全部床義歯等のすべての補綴臨床および顎関節症などにおいて口腔はもとより全身のバランスの改善、健康の回復に役だつ一つの手段として大変有意義であることが筆者の今迄の臨床経験で証明された。
 なお、咬合圧平面設定の実際および臨床応用編は誌面の都合により割愛した。
 以上の”咬合平面の新しい考え方”は『二シムラ・メソッドの補綴システム』に組み込まれている。



参考文献

1)河野正司、佐藤間私:咬合平面補綴臨床,別冊 1981
2)中沢勇:補綴字総論と全部広義歯の実際,永末書店、1953
3)亀田晃:矯正臨床における診断法、医歯薬出版1978
4)伊藤吉美:口腔内科学、永末書店1985
5)井上直彦、鈴木枠井:最新歯科矯正アトラス,医歯薬出版1971
6)片山伊九衛門:図解歯科ハリ麻酔ハリ治療,医歯薬出版、1977